第6回: 紅葉狩り ―雲錦模様―
木村ふみのうつわトーク
器の模様の一つに「雲錦」と呼ばれるものがあります。
満開の桜と紅葉を描いた色絵模様で、琳派の画風を写したものです。日本人の大好きな桜と秋を代表する紅葉の模様は季節を問わず一年中使う事の出来る大変便利な柄といえます。
桜を雲に見立て紅葉を錦に見立てることから「雲錦」と言われますが、その背景には紅葉のちりゆく様の一抹の寂しさと春の桜を待ちこがれる日本人の心の風景を読み取ることができます。
秋は「紅葉狩り」の季節でもあります。全国のあちこちから紅葉便りが伝えられまさに行楽シーズンです。平安の頃貴族達は狩りをしに野山に入りました。やがて野鳥や小動物を捕まえる狩りではなく、木の実や果物を捕るようになります。今日でも「いちご狩り」や「ぶどう狩り」と呼ばれる由縁です。
江戸時代になると庶民の間でも「紅葉狩り」が行われるようになり、豪商達などは遊山弁当や狩りの器にも凝るようになります。尾形乾山の色絵紅葉文透彫反鉢などを見ると当時の華やかさが伝わってきます。
四季折々の変化に心をとめ、自然を愛でる日本人のくらしの中で、器のはたす役割はとても大切なものです。季節の変わり目に器を取り替えたり、一年中使う事の出来る「雲錦模様」の大ぶりの鉢にたっぷりの野菜や煮物を盛ってみたり、日々の営みの中でメリハリをつけてみてはいかがでしょうか。