伝統のやきものから近代窯工業まで
古さと新しさがとけこんで独特の風情
四日市と伊勢湾を挟んで真向かいにあたる愛知県知多半島西岸に位置する常滑市。名古屋から名鉄電車で約40分、900年の歴史をもつ古くからのやきものの町です。「常滑」という地名は、万葉集にも用例がある古語で、常に滑りやすいところという意味です。実際、古くからこの地は岩土盤の露出が多く、鉄分を含む滑らかな良質の陶土が豊富に産出されました。町を歩くと、土管や植木鉢が積み重ねられた坂道、レンガ造りの高い煙突や登り窯跡など昔懐かしい風景があると思えば、モニュメントや巨大アートなど、新しい発見もたくさん。常滑は、やきもの文化の古さと新しさがほどよく調和して独特の風情を感じさせてくれるところです。
日本六古窯の最古で最大規模、常滑
常滑焼の歴史は古く、平安時代末期より約900年に及びます。奈良時代に朝鮮半島から来た「須恵器」の技術を受け継いで始まりました。日本六古窯のひとつで、その中でもかなり古く、その規模は最大といわれています。平安・鎌倉時代は穴窯で焼かれ、自然釉のかかった経塚壺などの宗教用器、室町時代には黒々としたたくましい真焼の手法で、壺やかめなどを作っていました。江戸時代後半になって常滑焼は復興し、中国の影響を受けた朱泥焼など、新たなやきものが誕生しました。今や、この手法で焼いた朱泥急須は常滑焼の代表格です。また、常滑焼を象徴するもうひとつの製品・土管の生産は鯉江方寿によって明治以降から始められました。
明治以降の工業化で、隆盛の一路
現在の常滑窯業の主流であるタイル、衛生食器などの生産は、現INAXの伊奈初之烝・長三郎親子が先駆者です。同時に、たくさんの製土工場や近代工場が設立され、一大窯業地帯となりました。
右の写真は街角アートと言うべき陶壁です。常滑西小学校、常滑東小学校、鬼崎小学校などにあります。
朱泥急須
幕末から明治初期にかけ常滑では新たな焼き物の技法が創出されました。その中の一つが朱泥焼です。鉄分の多く含まれた土を使い、高温で焼き締められています。朱泥の焼き物で、常滑を代表する色です。
古常滑
平安時代や鎌倉・室町時代にかけて常滑近郊では数多くの窯が築かれました。そこで焼かれていたのは、日常で使う瓶や壺などの生活雑器でした。長い年月のうちにそれらの焼き物は忘れられていましたが、昭和30年代に全国で古陶が注目されるようになると、常滑の古い焼き物のもつ美しさが評価され古常滑と呼ばれ愛好家に珍重されるようになりました。
観光客におすすめ、充実の観光スポット
常滑市陶磁器会館を出発点に、Aコース(所要時間約40分)とBコース(所要時間約2時間30分)に分かれている散歩道。Aコースの見どころは、滑りやすい坂道に土管や焼酎瓶のかけらを埋め込んだ土管坂や常滑の町が一望できる一木橋。やきものの町の風情をたっぷり味わってもらうコースです。Bコースは、常滑焼のすべてがわかる常滑市立陶芸研究所と各時代の生活と陶芸の関わりがわかる常滑市立民俗資料館。そして、最近話題になっている未来志向のトイレがみられるINAXのトイレパーク、窯のある広場など、次々に常滑焼の新名所が誕生しています。
見どころいっぱい、やきもの散歩道
A・Bと2つの散歩コースが作られている常滑の町は、町全体がやきもの一色。路地裏の小さなやきもの店、迷路のように入り組んだ道、上りつめた坂の向こうに思いがけず広がる海・・・、のんびり歩いて見て回るのに絶好の町です。土管坂や登り窯など、おもに町並み中心に楽しみたい人はAコース(所要時間40分)。常滑焼はじめ陶芸の歴史に興味がある人はBコース(所要時間2時間30分)がおすすめ。数多くのギャラリーは最近おしゃれスポット。ショッピングに興味があれば、平成5年3月にオープンしたセラモール。21軒の店舗にレストランや公園が併設した卸団地です。価格も安価で、あらゆる種類の陶器が揃っています。また、町のあちらこちらに陶芸教室が多いのも常滑の特徴です。どこも絵付けから本格的な作陶まで体験できる充実の施設が揃っています。
産地の団体
- 常滑陶磁器卸商業協同組合
- http://www.tac-net.ne.jp/~orosisho/index.html