第8回: 酒器のこと
木村ふみのうつわトーク
11月になるといよいよ新酒のおいしい季節を迎え、しぼりたてのお酒を少しひんやりしはじめた空気の中で味わうことができます。
10月は「神無月」と呼ばれますがこれは「醸成月(かみなしづき)」から由来していて新米により酒を「かもす」月ということです。造り酒屋の軒先に酒林(さかばやし)と呼ばれる杉玉が吊るされ蒼々とした杉の葉と共に新酒ができたことを知らせるのです。
お酒と言えば、徳利や盃が味わうための大切な要素です。最近では冷酒を呑むことが多くなり、片口やぐい呑みも人気があるようです。徳利には様々な形があり瓢形のものや源蔵徳利と呼ばれる通い徳利、そしていわゆる一合徳利などです。土物や磁器のもの、美しい絵が描かれているものから粋な小紋柄まで、実にバラエティーに富んでいます。
徳利は得利(とくり)とも書き、お酒を注ぐ音「とくとく」に由来しているとも言われています。片口は鎌倉時代に使われていた銚子と呼ばれる柄の付いた酒器から由来し両側に注口のあるものを両口(もろくち)、片側のものを片口と呼んだところからきています。ぐい呑は少し大ぶりの盃のことで、珍味入や薬味入れに見立てて使うのもお洒落です。徳利や片口もお酒だけではなくて出汁を入れたり、ドレッシング入れにしたりと多様な使い方ができますし、大ぶりの片口などは、サラダや煮物などにも適しています。盃は異なった窯や地域のものを集め、寄せ盃風に愉しむものも味わいがあります。
寒い季節、熱燗で一杯、好みの盃で味わうのは焼物道楽につきるのではないでしょうか。