信楽焼 カフェ・ギャラリー併設の卸小売店を取材

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やきものを多方面から楽しめる場所

素地、釉薬、窯元、販売店が立ち並ぶ中心地を走ると、ひときわ大きく「マルタ」書かれた塔が目に飛び込んできます。

株式会社マルタ陶喜は、創業90年ほどの歴史を持ち、信楽焼の生活用品から有名作家の芸術作品まで幅広いジャンルで取り扱う卸小売の会社です。カフェとギャラリーが併設された敷地は、見て、食べて、癒される空間となっていて、やきものをいろいろな側面からゆったりと楽しむことができます。代表取締役の今井智之氏にお話しをお伺いしました。

陶芸家でもあった祖父が名付けた屋号

窯元の家同士だった祖父母が結婚し、創業したのが「マルタ陶喜」です。

作陶も手がけ、クリエイティブな一面を持っていた祖父の名前は武治(たけじ)氏。その名前の「た」を取り、当時は一般的によく使われていた「まる」を付け、「マルタ」と名付けました。陶器の「き」の漢字が「喜」になっているのは、お客様がやきものを楽しみ喜んでもらえる場になるようにと、その漢字を充てたのだろうといいます。

マルタ陶喜は信楽の中でも比較的早い時期から、卸小売の事業を行っていた会社です。火鉢の生産供給の全国90%のシェアを占めていた時代には、トラックの積み荷がいっぱいになるほどの大型陶器を買い付けて販売を行っていたといいます。

流れを読み いち早く決断 ~大型から日常陶器へ~

20歳の時に東京の大手陶磁器問屋に就職。当時は、都市部の陶磁器関係の会社に一度就職したのちに郷里へ戻る、という進路が全国の陶産地で主流だったこともあり、今井氏もその道を進みました。その間、他産地の同年代と交流を深めたことで、その時の関係は今でも続いているといいます。

25歳で信楽へ帰郷。その頃は大きなトンネル窯がまだ稼働しており、大型陶器の生産量も多かった時代でした。そのような中、跡を継いだ今井氏は、植木鉢など大型陶器の取り扱いを一切やめることを決断。食器や置物など日常で使えるものを中心とした事業に絞る方向へと転換させたのです。

その考えは現在の店舗にも表れており、日常で使える器が大きな窯元から個人作家まで多岐に渡って取り揃えられている、その物量は圧倒的です。購買者が手に取って選ぶ楽しさを味わえる、そのような店づくりとなっています。

店舗の2階にある“まるたギャラリー”では、ドラマの主人公にもなった作家の神山清子さんから現代作家まで、1階の日常品とはまた違った銘品たちを展示。薪窯による作品や、古来から信楽で使われていた道具、資料なども陳列されており、六古窯の歴史と重みを感じさせてくれる空間がしつらえられています。

店舗のすぐ横に併設された、カフェ“マルポタ舎”は2013年にリニューアルされたカフェ。ゆったり飲食をする中でも、やきものを楽しんでもらいたいという、「陶喜」の思いを処々に感じることができます。

“やきもの”を知ることの大切さ

陶器(つちもの)は、土・窯・焼成・成形方法により、色の違い、色ムラ、たわみなどが生まれます。その予測不能な仕上がりこそが完成形で、魅力の一つでありながら、それが十分に伝わっていないがゆえの悩みもあるといいます。

オンライン販売により取引が活発になった反面、個性であるゆがみや色むらが受け入れてもらえずに返品されてくることもあり、この課題は全国各地の窯元・問屋・販売店が抱える共通の悩みではないかといいます。商品に対する説明を丁寧にすることを行いながらも、陶器に対する知識をもっと深めてもらうためにどうすればよいのかを、陶器業界全体の課題として考えていかなければならないといいます。

自身にとって「やきもの」とは

幼少の頃には、祖父から手ほどきを受け轆轤を引き、卒業後も自然の流れで陶磁器業界へと進んだ今井氏。

やきものに囲まれた環境で育った自分にとっては、継ぐことも自然の流れだったといいます。そんな氏にとってのやきものとは、自分の精神や活力の源泉である「糧」だといいます。生活の暮らしを豊かに、彩りを添えてくれるもので、いつも側にいるの「やきもの」は当たり前の存在なのだと、息をするように自然に答える姿が印象的でした。

【企業情報】

株式会社マルタ陶喜

〒529-1851滋賀県甲賀市信楽町長野1198-5

TEL:0748-82-0071 FAX:0748-82-2717

https://www.marutatouki.com/

【信楽陶器卸商業協同組合】

〒529-1851 滋賀県甲賀市信楽町長野149

TEL:0748-82-0039

https://shigaraki.shiga.jp

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