萬古焼 土鍋の窯元を取材
国内生産日本一 “萬古の土鍋”で炊く絶品ごはん
萬古焼の特徴の1つでもある“ペタライト”と呼ばれる耐熱鉱物。高度な耐熱性はガスや直火にも耐えうるため、土鍋づくりに適しており、昭和30年代以来日本の食卓を支え続けてきました。萬古の土鍋人気は高く、「土鍋ならば萬古一択!」と言って憚らないほどの“萬古土鍋愛”の強いファンがいるほどです。
土鍋を製造している会社は現在数社。その中の一社が土鍋の窯元として知られた「三鈴陶器株式会社」です。近年、主原料であるペタライトが価格の高騰と入手困難になる中で、新たな原料と共に、試行錯誤を重ねながら「良い土鍋」づくりを考えて日々取り組んでいます。
自らもお客様に直接土鍋の素晴らしさを伝え続ける、代表取締役の熊本泰弘氏にお話しを伺いました。
菰野の地にゼロから窯元を起ち上げる
三鈴陶器は今から約60年前、先代(現会長)が縁あって四日市から離れた菰野の地で開窯することになりました。
創業当時は耐熱性の高い土鍋(昭和34年頃から発売)が世の中に出回りはじめ、土鍋が飛ぶように売れていた時代でした。
そこに着目した先代も、三鈴陶器の土鍋を作ることにします。一言で「土鍋作り」といっても、販売ができるようになる品質にもっていくまでに、素地作りや釉薬・焼成などの試行錯誤を重ね、相当の時間を要しました。そういった先代たちの苦労が、現在の三鈴陶器の土鍋の形となって受け継がれています。
職人がいてこそできる少量での土鍋作り
土鍋をメインで製造している萬古焼の窯元は現在数社で、数は多くありません。製造法はそれぞれの窯元によって異なり、主に動力成形やローラー成形で製造していきます。ローラー成形は機械が大半をこなしてくれるため、大量生産が可能となりますが、動力成形は半自動成形のため、人の手が必要となる成形方法です。
三鈴陶器では、半自動成形で土鍋作りを行っています。実はこの成形は職人の技がかなり重要となる製造方法なのです。
土鍋の上の部分は内側に少し狭まっているので、金属のコテを下から当てて成形していくと上で引っかかって、通常なら抜けません。それを、職人のさじ加減で少し横にずらすことによって、抜けるように調整していきます。これはマシンを使う大量生産ではできないことです。この微細な調整が可能なことで、型の形状を頻繁に変えることができ、多岐に渡った形の土鍋作りに対応できます。
また、土鍋は職人が一つずつ全部カンナで削っていきます。その削り一つが、デザインや持ち手に変化を与えます。
職人の手を入れることで、「多品種少量生産」の対応が可能となる、それが三鈴陶器の特徴の一つで、現在、四日市を中心とした多くの商社が製品を取り扱ってくださっています。
土鍋の魅力を伝えることができる場を作る
近年、土鍋を多く取り揃えているところを見かけなくなり、いい土鍋が買える店が少なくなってきたことを危惧する熊本氏。メーカーとして「いいものを作って、しっかりと売る」道筋を作るということを、今後の展開の重要なポイントとして考えています。
いいものを作っても見ていただく場所が少ないと、お客様にも良さが伝わりません。土鍋は、技術でこれだけ多種多様なものが作れるのだという、「土鍋の可能性」をもっと知ってもらうための場所作りを積極的に行っていきたいといいます。
自身にとって「土鍋」「やきもの」とは
この質問に、しばらく考えていた氏から何度も出てきた言葉は「積み上げ」でした。
モノづくりというのは、いきなり完成形ができるわけではなく、長年のモノづくりの中から色々なものを組み合わせ、試行錯誤、紆余曲折を経て、今の形になっています。物をひとつひとつ積み上げていくように、経験を繰り返し、積み上げてモノづくりを行っていく、そこに土鍋作りの面白さがあるといいます。
素地作りやの技術、釉薬の技術など、素地師や職人たちと話を重ね、色々な要素と組み合わせ、課題が出てくる度に、今までの経験から「積み上げてきたもの」を組み合わせて解決してきた。だからこその「今」があり、出来た時に唯一無二の存在になれるのだと。
「継ぐ」というより「積む」という言葉がしっくりくると言います。多くのファンに愛されているのは、それらの土鍋は、三鈴陶器株式会社が積んできた答えとして、いま世に送り出されている土鍋だからだということが、熊本氏のお話や、経験と技術に裏打ちされた職人さんの作業を通して見えてきました。
【窯元情報】三鈴陶器株式会社
〒 510-1311 三重県三重郡菰野町永井3098-1
TEL:059-396-0529 FAX:059-396-0798
http://www.misuzu-c.com/index.html
【三鈴陶器の製品の購入問い合わせ先】
萬古陶磁器卸商業協同組合
TEL:(059)331-3496 FAX: (059)331-5914