第11回:土物の器
木村ふみのうつわトーク
寒い冬の季節になると、器も薄手の磁器物から少し厚手の陶器や土物の器をよく見かけるようになります。家庭の食卓にもざっくりとした信楽や織部、志野などが使われます。
もう少し身近なところでは土鍋や呑水(とんすい)も冬の定番と言えそうです。土鍋は最初に使う時には米のとぎ汁やぬかなどを入れ、お湯を沸かしてから使うとひびが入ったりもれたりすることがないと言われています。具だくさんの鍋料理は地方によって様々なバリエーションがあり、本当においしく楽しいものです。取り分けるための呑水は天ぷらのつゆ入れなどにも使われる取っ手のようなものがついた鉢のことです。古代から使われていた木の実を半分に割って水を呑んだ「カタチ」に由来して「呑水」と呼ばれたという説と、中国から伝えられた器で「湯(たん)匙(し)」というものがなまって「とんすい」となったと言う話とがあります。いずれにしてもスープ状の物を具と一緒に食すときに使われたようです。
土物の器では民窯のものが多く見られます。益子焼、小鹿田焼などは、その代表でしょう。ヨーロッパの土物では、イギリスでシチューなどを入れるスリップウェア―というのがあります。ヨーロッパの貴族達が別荘で狩りをしそれを煮込み料理にして暖炉の火を見ながら味わう時に良く使われる器です。
洋の東西を問わず、土物の器は火を囲んで暖まりながら使うのが一番のコーディネートのような気がします。