多治見陶磁器卸商業協同組合
多治見陶磁器卸商業協同組合は1932年(昭和7年)に設立され、2年後の1934年には公的に商業組合としての許可を得て始動します。
終戦を経て高度成長期を迎え、陶磁器産業も恩恵を受ける中で、多治見は陶磁器産業を支える陶産地の一つとして発展、多治見陶磁器卸商業協同組合は組合員の活躍を縁の下から支え続けてきました。
生まれ育ちも多治見だという専務理事、斎藤保治氏に組合の過去、今、これからについてお話しを伺いました。
商社のような役割で組合員を支える
終戦から高度成長にかけて、組合は梱包資材などの販売、組合向けのガソリンスタンド経営など、商社のような役割を果たしていました。
1947年(昭和22年)に中小企業組合法が施行された時に、「商業協同組合」へと組織が変わり、今に至ります。
斎藤氏自身は昭和59年に入社。
当時はバブル全盛期で、非常に忙しい時期だったと振り返ります。
コンピューターが出始めたこともあり、組合の中でもアナログからコンピューターへと切り替えを行うタイミングでした。
その頃に現事務所の建物も建築。
旧館は昭和53年建築、平成3年に竣工した新館は県内で初めてビル内にガソリンスタンドを設立した、先進的な建物です。
組合自体は陶器を販売する企業のサポートが目的のため、直接的にお客様とつながるということはありませんが、各企業を通じて流通の仕組みや、他業界を知ることが多いので、学ぶことが多いと氏は言います。
組合の役割
組合の役割は多岐に渡ります。大きな取り組みは、陶器まつりや陶都創造館の運営などです。
2023年からは第3週週末開催となった多治見の陶器まつりが、今の形になったのは昭和27年です。もちろん、それ以前からも陶器まつりはありました。
もともとは春に開催される「多治見陶器まつり」と、秋に卸団地の組合主体で開催される「茶碗まつり」の二つがありました。
しかし組合のメンバーが同じであったこと、コロナ禍による人手不足などもあり、名称を統合し「たじみ陶器まつり」として、年に2回開催するような形になっており、現在はその移行期です。
コロナ禍を経て、まつりの形態にも変化が出てきています。
たとえば会場。もとはオリベストリートを歩行者天国にして、集合会場で開催していましたが、現在は市役所や銀行など、様々な施設の駐車場スペースなどを活用した分散型会場になっています。
来場者や運営側などの様々な意見を聞きながら、未来永劫に続く「陶器まつり」であってほしい。そのためには、運営側の負担もできるだけ最小に抑える必要があります。運営側も続けたいと思える、盛り上がる陶器まつりにするための模索は始まったばかりです。
オリベストリートにある「陶都創造館」
オリベストリートは、多治見市が観光産業を活性化させるために生まれた構想です。
もとは3地区に渡っての「オリベストリート計画」がありました。
その中の一つが、いまある本町地区のオリベストリートです。
本町オリベストリートが始まった際に、国によって建てられた建物が「陶都創造館」(当時の名称は「たじみ創造館」)です。もともとは国の施設でしたが、国から市に譲渡され、市が民間への譲渡を決めた際に組合で企画書を提出し選ばれたことで、現在の形となりました。
3階は常設と企画展示となっています。美濃焼の歩みがわかる常設展示コーナーも組合が企画しており、文化財保護センターや組合員から展示品の協力を得て展示しています。
「展示されているものは美術品ではなくプロダクト品である」、という斎藤氏。
プロダクト品は、美術品とは違って保護をするわけではないため、失われていくものです。
製品として作ってきたものにこそ、多治見が歩んできた道を示してくれるものが宿っているという考えの元、先人たちが築き上げてきた足跡を守るという意味でも、製品を取り上げた展示にこだわっています。
また現在、1階には組合が運営する「うつわや多治見」では組合員40社による展示販売がされています。それぞれの企業が自信をもっておススメする選りすぐりの商品ばかりで、多治見の良質な製品を一堂に会して見て、買うことができる場所となっています。
多治見陶磁器卸商業協同組合のこれから
昭和60年に5単協あった組合が現組合に統合した際には360社ありました。
現在は約90社と4分の1となっています。
組合として今後考えるべきことは「組合自体の在り方」です。
組合員にとって入っているメリットは何か、ということを突き詰めていく。
これは、永遠の課題だと氏はいいます。
組合として残していくために、現在、若い世代にも伝わる活動内容や、維持するためのスリム化などに取り組んでいます。
今年、組合の若手3人が副理事長として就任。
次の世代への引継ぎがスムーズにいくように、組合や事務所の仕事の可視化への取り組みが始まっています。
また組合として、美濃焼の歴史的なことも検証しながら、後世につなげていけるような活動も続けていくことが重要で、地域のやきもの関係の神事なども中心となって執り行っています。
昔の組合のメリットの一つは、資材の共同購入による中小企業への負担軽減などありましたが、時代は刻一刻と変化しています。
では今の時代に何が必要とされているのか。
その一つが、同業者の中での「情報の交換」や、「つながり」が一つのメリットであるといいます。
豊富な経験を持つベテランから斬新なアイディアを持つ若手まで、年齢層が様々な組合員で構成されていることは強みであり、「組合に聞けばなんとかなる」という存在でありたい。
現在、抱えている課題の一つが「全組合員への情報の共有の仕方」という斎藤氏。
ITが進んだことで、メールやSNSなどのコミュニケーションツールは増えましたが、組合員によって活用には差があることも現実です。
組合から一方的に流すことはできても、その意見を吸い上げるいうことがなかなか難しい中、年配の方から若手までに届くような、情報共有の方法を模索しながら見つけていきたいといいます。
多治見陶磁器卸商業協同組合
〒507-0841 岐阜県多治見市明治町2丁目4
TEL: 0572-25-5588
HP: https://tatosyo.com/index.html